釣りを始めるとき、釣り針の種類や名称について疑問に思ったことはありませんか?
釣り針はターゲットとする魚や釣り方に応じて選ぶことが大切ですが、
その種類や特徴を知ると、さらに釣りが楽しく、効果的になります。
この記事では、釣り初心者向けに、
代表的な釣り針の基本形状とその名称を解説していきます。
釣り道具の基本として、しっかり覚えておくと、
釣り場での釣果もきっと変わるはずです。
それでは、早速見ていきましょう!
基本的な釣り針の部位名称を覚えよう
釣り針の形や種類を知る前に、
まずは基本的な部位についておさえておきましょう。
ここで簡単な図解を使って説明していきます。
- チモト
糸を結ぶ部分で、針と糸がしっかり結ばれるよう工夫された部位。
叩き、管付、撞木、穴あき、といったいくつかの種類があります。 - 軸(別名:胴、シャンク)
チモトの先端から針の曲がり始める所までの部位で、針の「胴体」部分。
強度アップや集魚効果を目的に、『平打ち』『胴打ち』といった加工がされている種類もあります。 - ケン(別名:エサ止め)
針の軸部分に付いている小さな突起で、餌のずれを防ぐための部位です。
内側に向いているものや、外側に向いているもの、ケンの数も1本や2本などさまざまです。 - 腰曲がり(別名:腰曲げ、胴曲げ)
軸の曲がりはじめから針の下部分までの範囲です。 - 先曲がり(別名:先曲げ)
針先を上に向けるための曲がりを先曲がりといいます。
重要な曲がりで、この曲がりによって針の種類や対象魚種がかわってきます。 - カエシ(別名:イケ、モドリ、モドシ、カカリ)
針先とは逆方向に突き出た突起で、掛かった魚が外れにくくなります。
ちなみに、カエシがない針をスレ、スレ針といいます。半スレは、小さめのカエシがある針のことを指します。 - イケ先
カエシから針先までの範囲です。
こちらも針の種類によってさまざまな加工がされる部位です。
代表的なもので、内側にイケ先を大きく向けることを『ネムリ』と言ったり、
針先側から軸を見て、右側にひねり加工をしているものを『ヒネリ』、反対側で『カネリ』と言ったりします。 - 針先(別名:ポイント)
釣り針の先端部分です。とっても鋭利。 - フトコロ
軸から、腰曲がり、先曲がり、イケ先、針先の内側の範囲のことをフトコロと呼びます。 - フトコロ幅
針先から軸までの幅のことを、フトコロ幅と呼びます。
フトコロ幅が狭いほうが口に入りやすいため、対象魚によって幅が決まってきます。 - フトコロの深さ
針先と軸を結んだラインから一番深いところまでの長さを「フトコロの深さ」と呼びます。
代表的な針の形状8選
釣り針にはさまざまな形状がありますが、ここでは特に代表的な8種類の形状についてご紹介します。
これらは、釣りで広く使われている基本的な形状で、それぞれの特徴や用途によって使い分けられています。
これを知っておけば、狙う魚や釣り方に合わせた針を選びやすくなるはずです。
丸セイゴの特徴
丸セイゴは、汎用性が高く、あらゆる仕掛けや魚種に対応できるスタンダードな形状です。
針選びに迷ったときは、まず丸セイゴを選ぶと良いでしょう。
安定感のある針掛かりと扱いやすさから、
初心者からベテランまで幅広い釣り人に愛用されています。
特徴
針のフトコロ幅が狭く縦長で、クセのないシンプルな形状が魅力です。
針先は内側を向いているため、根掛かりが少なく、
水面近くから底まで幅広く狙う釣りにも適しています。
魚が暴れても外れにくい構造となっています。
代表的な対象魚
スズキの若魚(セイゴ)をはじめ、アジやサバなどの青物、
カサゴやメバルといったロックフィッシュまで、幅広い魚種に対応します。
キツネの特徴
キツネは、口の小さな魚やエサを吸い込むように食べる魚に適した針で、
淡水釣りではワカサギ、海釣りではキスの釣りに特に多く使われます。
エサを吸い込みやすくするための工夫が施されており、
口の小さな魚を釣りたいときに効果を発揮する形状です。
特徴
この針は縦長で胴が長く、フトコロ(針の隙間)がやや狭い設計で、針先が内側に向いているのが特徴です。
内向きの針先は根掛かりを防ぎ、針の鋭さを保ちやすいため、
底物の釣りに向いています。また、吸い込みやすい形状から、
口の小さな魚やワカサギ、タナゴ、カワハギ、キスに適した形状です。
代表的な対象魚
カワハギ、キスやワカサギ、タナゴなど、
口の小さい魚やエサを吸い込むように食べる魚種。
流線の特徴
流線針は、投げ釣りや底物釣りで広く用いられる針で、
キスやカレイなどの魚種に対応する形状です。
長めの軸とユニークなカーブ構造により、
エサを魚に吸い込ませやすく、釣り初心者にも扱いやすいのが特徴です。
特徴
流線針は縦長の形状で、針先が短く、腰曲がり部分が2段階でカーブしているのが特徴です。
フトコロ幅はやや狭く、虫エサを安定して装着しやすい設計になっています。
また、針先は軸とほぼ平行で、根掛かりが多少発生しやすい反面、針掛かりが良好な構造です。
代表的な対象魚
キス、カレイなど、口が小さくエサを吸い込むように食べる底物の魚種に適しています。
伊勢尼(いせあま)の特徴
伊勢尼針は、太く強靭な軸を持ち、大物をしっかりと掛けられる高強度の針です。
特に強い引きに対して曲がりにくい設計が特徴で、丸セイゴよりもフトコロ幅が広く、掛かりの安定性が優れています。
サイズ展開が豊富なため、ターゲットに合わせて幅広い魚種に使用できる汎用性も備えています。
形状の特徴
伊勢尼針は、針の軸が太く、広いフトコロと均一なカーブを持っており、
針掛かりの良さが特徴です。
しっかりとした強度があり、大物にも耐えられるため、
魚が引いても針が曲がりにくく、鈎先は鋭く少し内向きで、外れにくくなっており、釣り人にとって安心感のある形状です。
代表的な対象魚
チヌ(クロダイ)、グレ(メジナ)などの大物をターゲットとする釣りに適しています。
また、サイズを変えることで小物から大物まで汎用的に対応可能です。
袖の特徴
袖針は、比較的小型の魚をターゲットにする釣りに適した針で、
アジやハゼ、サヨリなどの釣りに向いています。
形状は、細身でシャープなカーブを持つ構造になっており、針掛かりが良い設計になっています。
淡水・海水問わず、サビキ釣りや小物の五目釣りなど、手軽に楽しめる釣りで多く使用されます。
形状の特徴
袖針の最大の特徴は、腰曲がりと先曲がりがシャープな角度で曲がっている「角ばり」があることです。
胴と針先の角度はほぼ同じで、全体的に直線と角ばったカーブで構成されています。
この形状により、魚が口にした際に軽いアワセで掛かりやすく、素早く刺さるようになっています。
また、針の軸は細く軽量で、エサが自然に見える設計です。
代表的な対象魚
アジ、ハゼ、サヨリ、タナゴなど、比較的小さく、力の弱い魚がメインです。
海津の特徴
海津針は、力強い魚を狙う釣りに適した、しっかりとしたホールド力が特徴の針です。
大きくとられたフトコロ幅により、貝エサや蛹エサなどを安定させやすい形状で
掛かった魚が外れにくい設計になっています。
形状の特徴
海津針は、特徴的な「く」の字に大きく曲がった形状をしており、
針先は大きく「チモト」の方向を向いています。
このため、根掛かりがしにくく、さらに掛かった魚が外れにくいホールド力を備えています。
また、フトコロ幅が広いためエサを食い込んだ魚を掛けやすく、針先も口に掛かりやすい。
独特な形状により、付けたエサが安定しやすいのも特徴です。
代表的な対象魚
クロダイ、カワハギなど、力強い引きを持つ魚や、エサをしっかり食い込ませて掛けたい魚種。
丸海津の特徴
丸海津針は、長くストレートな軸と広いフトコロを持ち、エサを安定して刺しやすい針です。
特にエビ、虫エサなどを使う釣りに向いており、素直な形状から糸ヨレが少ない。
シンプルな形状で癖もなく幅広い魚種に対応できる針です。
形状の特徴
軸が長いため、エサをまっすぐに刺しやすく、特にエビ・虫エサが安定します。
また、形状に癖がなく、針先が鋭く掛かりが良いだけでなく、
フトコロが広いことで大きなエサや房掛けも可能です。
さらに、魚がエサを深く飲み込んだ場合でも、軸が長いためラインが歯に当たりにくく、糸切れのリスクが低減されます。
ただし、相対的なフトコロの浅さと軸の長さから、若干のバラシが起こりやすいことには注意が必要です。
代表的な対象魚
アマダイ、チヌ、フグ、カレイなど、エビエサや虫エサを使う魚種
ムツの特徴
ムツ針(ネムリ針)は、針先が極端に内向き(ネムリ)になった特徴的な形状を持つ針で、
魚がエサを飲み込んでも針が口の深い位置にかかりにくい設計です。
主にムツやカサゴ、アラなど、エサを丸呑みする魚や根魚をターゲットとする釣りで用いられ、
沖釣りから堤防釣りまで幅広く活用されています。
形状の特徴
ムツ針の針先は大きく内側(チモト方向)に向いているため、
魚がエサを飲み込んでも針先が口付近にスライドしてからフッキングが決まる仕組みです。
これにより、エサを深く飲み込む魚にも針掛かりが安定します。
また、エサを刺した際に針先がガードされるため、投入時のズレが起きにくく、
サンマやサバの切り身などの柔らかいエサも保持しやすいです。
内向きの針先により根掛かりもしにくく、根魚狙いにも適しています。
代表的な対象魚
ムツ、アカムツ、カサゴ、アラなど、大きな口でエサを丸呑みするタイプの魚。
沖釣りや根魚を狙う際にも活躍します。
針の加工に関する知識
釣り針は、その形状だけでなく、さまざまな加工によって性能が大きく左右されます。
釣りのシチュエーションや狙う魚に合わせて、針にはさまざまな工夫が凝らされているのです。
針の加工に関する基本的な知識について解説していきます。
どのような加工が針の特性を生み出しているのか、
ぜひ知識を深めてみてください。
チモトの種類について
チモトとは、釣り針の根元部分で、ハリス(釣り糸)を結びつける箇所を指します。
この部分は、針と糸をしっかり固定するために重要な役割を果たしており、
針の形状や加工によって糸の結びつきやすさや耐久性が変わります。
- 平打ち
プレス加工をして平らになっているチモトの形状で最も一般的な加工 - 管付き
糸を通す『管』がついている形状のもの - 撞木
平打ちに比べてより糸が抜けないように加工されている - 穴あき
石鯛などワイヤーを通す針に使われます - 切込み
カエシ加工があることで抜けの効果があります - ギザ耳
珍しい加工ですが鮎針の加工として使われています
針の軸に対する加工
釣り針の軸部分には、強度や特性を向上させるためのさまざまな加工が施されることがあります。
ここでは、「丸軸」「平打ち」「胴打」の3つの加工について、その特徴と効果を解説します。
丸軸
丸軸は、プレス加工を施していない、線材本来の形状をそのまま生かした針の軸を指します。
シンプルな構造で、加工による偏りがないため、幅広い用途で使用されています。
平打ち
平打ちは、針の胴の部分を横からプレスした加工です。
この加工によって、針の縦方向、つまり魚の引きに対する強度が向上します。
強い力が加わる状況でも針が変形しにくくなるため、
大物狙いやタフな環境での釣りに適しています。
胴打
胴打は、針の胴部分を横から強くプレスして平らにする加工です。
この加工を施した針は、プレスされた面が光をキラキラと反射し、集魚効果をもたらします。
特に光に敏感な魚を狙う際に有効な針の加工方法です。
ひねり加工について
釣り針に施される「ひねり加工」とは、針先が軸に対してわずかにねじれた形状を指します。
この加工は一見すると小さな違いのように思えますが、実際には釣果や使用感に大きな影響を与える重要なポイントです。
また、ひねり加工をする方向によって名称が変わってきます。
針先を手前側、軸を奥側に見た場合、写真は、右曲がりなので『ヒネリ』になりますが、左曲がりは『カネリ』と呼びます。
ひねり加工のメリット
すっぽ抜けを防ぐ
針先が内側や外側にひねられていることで、魚が針を飲み込んだ際に針先が魚の口に向きやすく、フッキングが決まりやすくなります。
また、魚が違和感を感じてエサを吐き出そうとしたときでも、針が口の中で立ちやすく、初期掛かりをサポートします。
向こうアワセとの相性が良い
魚がエサをくわえたタイミングで自然に針掛かりする「向こうアワセ」系の釣りに適しており、特に仕掛けを動かさないスタイルの釣りで効果を発揮します。
ひねり加工のデメリット
エサが自然に動きにくい
ひねりがあることで針先がエサの動きに影響を与え、潮流がある環境ではエサが回転したり、動きが不自然になることがあります。これにより、魚に警戒される可能性があるため、仕掛けを積極的に動かす釣り方には不向きです。
ハリスがヨレやすい
特に切り身や抵抗の大きいエサを使う場合、仕掛けの回収時にハリスがヨレることがあります。この点には注意が必要です。
カエシについて
針のカエシ(バーブ)は、針先から少し下がった位置に付けられた逆向きの突起部分を指します。
この小さな構造は、魚が掛かった後に針が外れにくくなるように設計されています。
釣り針における基本的な要素でありながら、その有無や形状によって釣りの結果に大きな影響を与える重要な部分です。
かえしの効果
- 魚のバラシを防ぐ
かえしがあることで、一度掛かった魚が針を外そうとして暴れても、針が抜けるのを防ぐ効果があります。特に力強い引きを持つ魚や、活発に動く魚を狙う釣りでその効果を実感できます。 - エサの保持力向上
かえしはエサをしっかりと固定する役割も果たします。特に柔らかいエサや切り身エサを使用する場合、かえしがあることでエサがずれにくくなり、安定性が向上します。
かえしのデメリット
- 魚へのダメージが大きい
かえしがあることで、魚を外す際に口や体に余計なダメージを与えることがあります。キャッチアンドリリースを前提とした釣りでは、かえし無しの針が選ばれることも多いです。
イケ先加工について
釣り針の「イケ先加工」は、針先の形状や向きを調整することで、針の強度や魚への掛かりやすさを向上させる加工技術です。
この加工は針の種類や狙うターゲットに応じて選ばれ、釣果を左右する重要な要素となります。
ここでは、代表的なイケ先加工についてその特徴と効果を紹介します。
先打(さきうち)
先打は、針先部分をプレスした加工です。
この加工を施すことで、針先の強度が増し、魚による変形を防ぐことができます。
先出し(さきだし)
先出しは、針先をフトコロ部分から外側へ向かうように曲げた加工です。
この形状により、魚がエサを吸い込んだときに針掛かりがスムーズになりやすいという特徴があります。
先曲げ(さきまげ)
先曲げは、針先を軸に向かってわずかに内側へ曲げた加工です。
この形状は、魚が針をくわえた際に口にしっかり刺さりやすく、掛かった後の安定感を高めます。
小鯛針やチヌ針に採用されており、正確なフッキングを求められる釣りに向いています。
ネムリ
ネムリは、針先を軸方向へ大きく曲げた加工です。
このデザインは、魚が掛かった後に針が外れにくいという利点があります。
ムツ針やネムリ針といった針で採用されており、
特に力の強い魚や根掛かりしやすい場所での釣りで効果的です。
ケン加工について
針の軸部分に設けられた突起「ケン」は、柔らかいエサや滑りやすいエサをしっかりと固定することが出来ます。
仕掛け投入時や遠投時にエサが落下するのを防ぎ、特に仕掛けを遠くに投げる釣りやエサの固定力が求められる状況で効果を発揮します。
一方で、ケン加工を施すことで針自体の強度がわずかに低下することがあるため、
使用する釣りのシチュエーションに合わせた選択が重要です。
おわりに
釣り針は日常的に使われる道具ですが、その形状や加工には意外と奥深い世界が広がっていることに驚かれたのではないでしょうか。
今回の記事では針の基本形状や加工についてご紹介しましたが、実際にはメーカーごとに独自の工夫が施された針も数多く存在します。
ただ、こうした特殊な針の良さを理解するには、まず基本的な知識が必要です。
本記事がその第一歩となり、釣りの楽しみをさらに広げるきっかけになれば幸いです。
それでは、良い釣りライフを!